2021-04-01から1ヶ月間の記事一覧

#7 サナトリウムより~『風立ちぬ』/『冬の日』/『足たゝば』

サナトリウム文学とよばれるジャンルがあります。結核に有効な治療法がなかった時代に、結核にかかった患者は空気のきれいな高原などで長期療養する習慣がありました。そんな人里はなれた清潔なサナトリウムで、俗世から離れ、特に若者が命と向き合いながら…

#6 花伝書 秘すれば花~『すらすら読める風姿花伝』/『当麻』

今日のテーマは『花伝書』、観阿弥・世阿弥の築いた古典芸能・能の本質を記した著作です。わたし自身、能の観覧も経験が浅く、初学者なので、少しでも能の考え方に近づける作品を手掛かりに読み解いてみようと思います。 一冊目は、林望さんの『すらすら読め…

#5 円卓の騎士~『忘れられた巨人』/『薤路行』

イングランドを中心に、五世紀の昔から形を変えて語り継がれる「アーサー王伝説」。今回はその脈々とつづいてきた系譜の中でも、近現代のアレンジを加えた二作品の小説を取り上げたいと思います。 はじめに、「アーサー王伝説」の来歴やあらすじを少し。アー…

#4 桜花~『桜の樹の下には』/『桜の森の満開の下』

今年、関東の桜は早く咲き、早く散ってしまいました。日本人は古くから、桜という花を特別な存在と考え、様々な感情を重ねてきました。桜前線なんて言って開花状況を報じるのは、日本くらいかもしれません。それくらい桜の花に執着し、一喜一憂し、心を奪わ…

#3 箱人間~『箱に入った男』/『箱男』/『箱女』

箱人間という、物騒なタイトルをつけました。検索にかけると、箱から霊が出てくるホラーや、なんだかいかがわしいコンテンツが表示されるのですが、今日のテーマを端的に表す言葉として、びくびくしながら使います。今日は箱人間に関する作品です。 では穏や…

#2 べつの言語で~『べつの言葉で』/『日本語を書く部屋』/『エクソフォニー』

新しい言語を学ぶことは、新しい扉をひらくようにまったく別の世界観を見せてくれる。たとえば、虹の色の数が文化によって七色だったり、八色だったり、はたまた三色だったり。日本は伝統的に魚料理が食べられてきたので魚に関する語彙が豊富だけれど、西欧…