#17 結婚前夜~『華麗なるギャツビー』/『ジェーン・エア』/『私の男』

マリッジブルーという言葉がありますが、人生の中でも華やかで多幸感にあふれる結婚を前にしても、これでよかったのか、この先何が待っているのかという不安が襲ってくるものなのでしょうか。未婚のわたしは想像するばかりですが、人生に一種の決定打を打っ…

#16 時間から逃げ出す~『モモ』/『酔え!』/『悩みはイバラのようにふりそそぐ』

忙しくて時間がない、時間に追いかけられる日々から脱出したい。と思うこともしばしばな、せわしない現代です。お休みの日くらいは時間をわすれて羽を伸ばそうとするけれど、時間に捉われないように努力するというのも、つまりは時間を有効に使おう、なるべ…

#15 今、よみたい本~『となり町戦争』/『服従』/『The Journey』

今回は『今、よみたい本』という題で、2022年の立ち位置を考える本を二冊、紹介したいと思います。そのうち収まるのかなと楽観視していたコロナは依然として猛威を振るい、将来は暗雲に包まれている。その一方で、昨年になってアメリカのトランプ政権が集結…

#14 句読点の妙~『春琴抄』/『窓の魚』

こんにちは、久しぶりの記事投稿になりました。今回は、表現からみたテーマに立ち返り、句読点の使い方がちょっと特徴的な二作品を取り上げたいと思います。句読点は意味の区切りや文の終わりをわかりやすく示す役割だけでなく、文章全体のリズムを左右する…

#13 アートのすすめ~『名画を見る眼』/『美術の物語』

芸術の秋ですね。マイナーかもしれませんが、わたしは芸術の中では美術鑑賞が好きです。美術館に行くととてもリフレッシュできるし、他では得られない種類のエネルギーを蓄えられる気がします。今日は、美術の理解を深める本を紹介しながら、絵画鑑賞の布教…

#12 書く者の心構え~『山月記』/『The Shadowland of Dreams』/『文学と自分』

久しぶりに高校の教科書を開く機会があって、ぺらぺらとページをめくるうち、中島敦作の『山月記』が目に留まりました。優秀な官吏でありながらも詩人になることを志して隠居した李徴が、自分自身と周囲の人に対するプライドに苛まれた挙句、虎に姿を変えて…

#11 武士道からグローバリズムを考える~『武士道』/『新渡戸稲造はなぜ「武士道」を書いたのか』

オリンピック・パラリンピックが終わりました。多くの選手が活躍し、わたしも勇気や希望をもらいました。その一方で開催に向けての不祥事や懸念が相次ぎ、もやもやが多かったのも確か。特にせっかく日本の特色や文化を発信する場であった開会式・閉会式の演…

#10 幼少期~『思ひ出』/『仮面の告白』/『銀の匙』

自伝的小説と呼ばれる作品の中でも、子供時代を描いたものを興味深いと感じます。物心がつくか、つかないかの朧げな風景や、近しい人々にまつわる断片的な逸話。作家がどんな幼少期を過ごしていたか、という好奇心よりも、原初的な記憶をどのようにとらえ直…

#9 茶の本~『茶の本』/『100分de名著 茶の本』

日本の文化を違う国の人に伝えるというのは、とても難しいことだと思います。形だけ真似してみても、習慣や言葉、宗教の考え方など違いが立ちはだかって、「ほんとはちょっと違うんだけどな」と理解の齟齬が生まれてしまう。 日本文化が注目されて、お寿司が…

#8 シュルレアリスム、そしてAI~『シュルレアリスム 終わりなき革命』/『シュルレアリスムを読む』/『人工知能の見る夢は』

シュルレアリスムは、フランス語で超現実という意味 (surrealism) 。第一次世界大戦後の1920年代にフランスで興った芸術運動で、『理性から解き放たれた無意識』によって人間の全体性を回復しようと目指したものでした。 理性から解き放たれるということは、…

#7 サナトリウムより~『風立ちぬ』/『冬の日』/『足たゝば』

サナトリウム文学とよばれるジャンルがあります。結核に有効な治療法がなかった時代に、結核にかかった患者は空気のきれいな高原などで長期療養する習慣がありました。そんな人里はなれた清潔なサナトリウムで、俗世から離れ、特に若者が命と向き合いながら…

#6 花伝書 秘すれば花~『すらすら読める風姿花伝』/『当麻』

今日のテーマは『花伝書』、観阿弥・世阿弥の築いた古典芸能・能の本質を記した著作です。わたし自身、能の観覧も経験が浅く、初学者なので、少しでも能の考え方に近づける作品を手掛かりに読み解いてみようと思います。 一冊目は、林望さんの『すらすら読め…

#5 円卓の騎士~『忘れられた巨人』/『薤路行』

イングランドを中心に、五世紀の昔から形を変えて語り継がれる「アーサー王伝説」。今回はその脈々とつづいてきた系譜の中でも、近現代のアレンジを加えた二作品の小説を取り上げたいと思います。 はじめに、「アーサー王伝説」の来歴やあらすじを少し。アー…

#4 桜花~『桜の樹の下には』/『桜の森の満開の下』

今年、関東の桜は早く咲き、早く散ってしまいました。日本人は古くから、桜という花を特別な存在と考え、様々な感情を重ねてきました。桜前線なんて言って開花状況を報じるのは、日本くらいかもしれません。それくらい桜の花に執着し、一喜一憂し、心を奪わ…

#3 箱人間~『箱に入った男』/『箱男』/『箱女』

箱人間という、物騒なタイトルをつけました。検索にかけると、箱から霊が出てくるホラーや、なんだかいかがわしいコンテンツが表示されるのですが、今日のテーマを端的に表す言葉として、びくびくしながら使います。今日は箱人間に関する作品です。 では穏や…

#2 べつの言語で~『べつの言葉で』/『日本語を書く部屋』/『エクソフォニー』

新しい言語を学ぶことは、新しい扉をひらくようにまったく別の世界観を見せてくれる。たとえば、虹の色の数が文化によって七色だったり、八色だったり、はたまた三色だったり。日本は伝統的に魚料理が食べられてきたので魚に関する語彙が豊富だけれど、西欧…

#1 ばらける言葉~『流跡』/ 『カリグラム』

新聞や本の文章を読んでいると、文字が一列に何文字、それが横あるいは縦に何行、という規格通りに並んでいるのが当たり前に思えてくるけれど、ほんらい言葉はそんな四角い形に配置されていなくてもいい。と、あらためて考えるとそうなのだけれど。 表現上、…

ブログ 天気雨文庫について

国語の教科書が好きだったおとなの図書室!と銘うって、ブログを始めます。 学生の頃、現代文や古文のテキストに載っている文章を先取りして読んでしまうのが好きで。普段手に取る小説とは違う種類の文章だけど、新しい視点を開いてくれたり、知らなかった表…